たまにはインフレータブルカヤックの遊びや装備のほうではなく、メンテのことを書くことにする。
で、ナニを書くかといえばリペア。
もちろんアウターハル:船体生地についてもリペアという言い方はするが、今回はエアチューブのほうに特化して書く。
チューブに穴や裂け目ができてしまった場合、付属のリペアパッチ(チューブと同じ素材の端切れのようなもの)や接着剤で補修する。
最近はパッチは入っていても接着剤がついてないキットのほうが多いので、まず接着剤について。
チューブの素材はグモテックスやグラブナーを除いてPVCなのでその用途の接着剤になるんだが、ホムセンなどにあるPVC用(コニシの小さいもので150円前後)は推奨できない。というのも、溶剤があまり有害ではないものを使ってあり、人体には優しいのだが接着力が弱くはがれることが多い。なので若干高いんだが
ゼファーのヤツなどを用意する(あるいはカヌーショップなどにも置いてある場合がある)
で、いよいよリペアの方法だが、いくつかパターンがあるのでパターンごとに図で示す。
【図1:圧着部などの切れ】
図の上、赤い部分が損傷か所。で、この場合わずかな切れ(目安として5mm以内程度)の場合、右下のように充分な量の接着剤を乗せるだけの方法も取れる。その場合、ピンポイントで乗せるのではなく切れの周囲1cmくらいまで広範囲に塗り、切れの部分をいちばん厚く盛る。最初に全体を薄く塗ってから2~3分時間をおいて重ね塗りするとよい。(時間については状態をみながら)
切れが少し長いようなら付属のパッチを上記の塗る範囲程度の大きさに切り、パッチを接着する。接着方法はメーカーによって書き方が違う(
*)けど、全体を塗ってやると溶剤によってパッチの端が反り返るし、接着面に空気が残ってしまうこともあるので、まずは切れの部分(中心部)のみに接着剤を塗ってパッチを接着する。数分後安定しはじめたら、その周囲部分にも接着剤をいれて中心部から数回に分けて徐々に端までを接着していく。こうするとパッチの反りの影響も少ない。その後重しをして安定するまで放置(約1日)。最後に仕上げとしてパッチの縁の段差部分を接着剤で塗り固める。見栄えはアレだが、縁の部分のわずかな隙からパッチがはがれるのを防止するためなので必ずやったほうがよい。
*メーカーのほとんどが「チューブ側とパッチに接着剤を塗りしばらくたったら貼り付けて強く押さえる」ような感じで書いてある。正しいんだけど、実際にそれをやろうとするとパッチの反りがかなりめんどうになる。
【図2:圧着部のはがれ】(圧着不足など)
あまりないことだが、まれに圧着部がはがれるケースもある。この場合、あまり広いとセルフ対処よりメーカー対処のほうがよいが、はがれが1cm程度くらいまでならリペアで充分いける。
こういう場合はパッチは使いようがない。接着剤をちょっと多めに隙間に入れ洗濯バサミ(あまりキツくないほうがよい)でとめて放置なんだが、洗濯バサミでとめたあと、チューブをものすごゆるゆるに空気をいれる。これは隙間からなかにしみ出した接着剤で接着されちゃいかん部分までくっつかないようにするため。なのでうまいぐあいにチューブ内部がくっつかないようにできればそれでよい。
【図3:平面部のピンホールや切れ】
これについては図1の対処とほぼ同じで、パッチ使用有無の目安だけを書いておく。ホントに針で刺したような程度のピンホールであれば接着剤を盛る方法でOKなんだが方向性がある切れならパッチを使用する。方向性がある切れの場合、その切れの端に力がかかるとそこから裂けてしまう。それを抑えるだけの補強は接着剤を盛る方法では無理なのでパッチを使う。
貼り方などは図1のところを参照。
◆セルフリペアが難しい例
【図4:平たく形作られているチューブの内部接合(圧着)面】
フロアチューブによくある構造なんだけど、チューブをひらたく構成するために上図のような内部で圧着ないし接合されている部分がはずれる場合がある。この場合はダメもとでやる方法はあるが成功する見込みは少ないので素直にメーカー修理または交換するしかない。
このような部分がはずれるのはほとんどの場合、過圧による。
とくにフロアチューブの場合、ある程度沈み込むのが当たり前なんだが、なるべく沈み込みが少ないようにパンパンに膨らませるのが原因。手元に圧力計があればフロアの適正psi値のときのチューブの張り具合は確認しておいたほうがよい。もうちょっといれたほうがいいんじゃ?と思える状態でpsiが適正値になることが多い。
ほとんどのレクリエーション艇がこのようなフロア構造だが、例外として、ラグーン2はチューブじゃないフロア、セビラーSKシリーズはドロップステッチフロアで対象外。グラブナーやグモテックスは構造はそのとおりだが、二重構造ではない強靭な生地なので発生することはほとんどない。
キャプテンスタッグ(CAPTAIN STAG) ラグーン2 カヤック ポンプ付
この艇のフロアはインフレートするフロアではなくてウレタンフォームのシートフロア。
セビラー SK200DSスポーツカヤック
このシリーズの艇のフロアは上下方向に無数のナイロン繊維がついていて7psiという高圧がかけられ人が乗っても曲がらないほどのボード状になる
グラブナー ソロA1
グラブナーは構造としては図4の上なんだが、そもそもインナーチューブ方式ではなく、チューブそのものが船体となる強靭な生地で作られていて上記のようなはずれは起きにくい
最後に、スプリングバルブを使用したインナーチューブ、アウターハルの二重構造の場合のバルブの締めなおしの注意など。
【図5:スプリングバルブ締めなおしでのズレ】
上はアウターハルとインナーチューブの向きが正しくセットされているので空気を入れてもチューブには問題はおきない。
下はインナーチューブが若干向きがずれて締められている状態で、空気を入れるとチューブは矢印方向によじれた力がかかる。
インナーチューブはバルブまわりだけちょっと厚い生地で補強するとともにバルブを受けやすくしているため、その生地周辺でねじれが起こり、切れや裂けにつながる。
これはあくまでチューブ構造が二重で、スプリングバルブを使用している場合に限って注意が必要なものなので、ボストンバルブ系のものは対象外。
…と、こんなとこかなぁ。
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